2012年TRPGはじめ

 今年のTRPGはじめはBlossomサタスペでした。
 オリジナルシナリオでDDをしてきたよ。
 長いので畳むよ。
 ある日の大阪、ミナミ。


 40歳、まだまだ独身。寒い国からやってきた女、「テルミン・オリガ」。
 56歳、“死の右腕”の異名を取る非常勤講師。「千早雅之」。
 18歳、まだ少年の雰囲気を残しながら死の商人を営む「サイドキックJr」。


 この三人で構成される亜侠チーム『チーム夜叉』は、バー「JAIL HOUSE」の奥深く、“海”と呼ばれるスペースの中にある個室に呼び出されていた。
 “海”を担当する女バーテンダー――モノクルをかけた若い女――が、彼らに依頼があるという。
 曰く、“夜叉”になりすまして殺しの仕事をして欲しい、と。


 提示されたまずまずの報酬を呑み、彼らは仕事を始めた。
 まずは情報収集だ。
 ひとつ、“夜叉”とは何者か。
 ひとつ、ターゲットは何者か。


 “夜叉”、またの名を“闇の殺人者”。
 それは亜侠、いや、大阪の犯罪者なら知らぬ者はいないと言われる暗殺者(バンガイ)だった。
 だが彼は既にこの大阪から、ひょっとしたらこの世界にはもういない、と言われていた。


 調査を進めるうちに、“夜叉”を装うための情報が集まっていく。
(具体的には『夜叉の外見的特徴決定表』『夜叉の殺害方法決定表』で決まるのだが)


 その結果判明したこと。
 外見はセーラー服に身を包んだ40歳近い女性という、誰も得をしないビジュアル*1になった。
 そして「おたから」を用いて標的を仕留めるというのだ。


 一同は頭を抱えた。


 彼らの趣味では、戦闘に使えそうな「おたから」がサイドキックJrの『ボールの友達』くらいだったのだ。
 しかも、彼は別にそれを持っているわけではなかった。*2
 JAILHOUSEの場所ルール[キャラクターの交代]で適切な「おたから」を持っていそうな、または使えそうな亜侠を引っ張ってくるのも難しそうだった。


 頭を抱える出来事はまだあった。
 情報収集の最中、千早雅之が2人もの「女子高生を装った殺人鬼」と恋仲になってしまったのだ。
 また、標的がコンビナートの構成員という事も一同の顔を暗くした。


 が、状況は進めなければならない。
 女子高生(を装った殺人鬼。ちなみに名前はエリスとブランカになった)からの電話攻勢×2をかわしつつ情報収集を進める千早雅之。
 結局彼はブランカを「6日後に結婚しよう(シナリオの期限は5日)」と、シナリオのフレーム外に追いやることに成功し、エリスを襲撃時の戦力とすることに成功した。
(ただし、血戦時に異能《非現実の恐怖》で精神点を減らされてはかなわないので、エリスとは事前に会って、更に他の二人に紹介するハメにはなった)


 また「女子高生を装った殺人鬼」は女性かどうか、という雅之の問いに対して「女子高生とは女子高校に通う生徒のことであり、性別が女性とは限らない」「いや常識で考えてくださいよDD」「現実の常識がゲーム内の常識とは限らない*3」などという哲学的なやりとりが行われたが、結局ダイスを振って女性ということに落ち着いたりもした。


 その一方で“夜叉”の外見を真似るための準備を整えるテルミンとサイドキックJr。
 だが「おたから」の問題だけはどうにも解決しそうになかった。


 様々な手段が検討された結果、地下帝国の宝物庫から「おたから」をちょろまかすという案が採用された。
 一か八かである。
 何せ、誰かがファンブルしたら、全員に2D6のダメージが入るか、下手をすれば問答無用で死ぬのだから。


 そして彼らは賭けに勝った。
 テルミンの素晴らしいダイス目によって、3個の任意の「おたから」を入手できるという結果になったのだ。


 彼らが選んだ「おたから」は以下の通り。
 テルミン:『名誉顧問のバッジ』から盟約おたから『七星剣』を引っ張ってくる(殺人鬼との戦闘まで踏まえ、雅之のリクエスト)
 千早雅之:『ベントラー☆ベントラー』を『芝刈り機』として運用
 サイドキックJr:『ボールの友達』


 結局『ボールの友達』は選ばれることになった。


 準備万端整い、標的のアジトへ襲撃をかける『チーム夜叉』。
 エリス……「女子高生を装った殺人鬼」は、データを使って戦闘に参加させると面倒なため、先行して敵のブラックアドレス一人を減らした、という扱いになった。


 各々が「おたから」を携え、化粧や衣装で「セーラー服に身を包んだ40歳近い女性」になりきった『チーム夜叉』の面々を見て、標的はポカーンとした後に「何だお前らwww夜叉とかwwww何の冗談だwwwww帰れwwwwwwww」的な反応を返す。
 ただ一人、彼らの傍らにいたブラックアドレスだけが「……夜叉」と低く呟き、AKMのセイフティレバーに手をかけた。


 こうして血戦の火ぶたは切られた。
 敵を[死亡]させる際に「おたから」を用いねば「夜叉」の仕業とはならない。
 緒戦は通常の火器による撃ち合いが行われ、珍しくダイス目のいいDDに苦戦気味ではあるものの、順当に敵の体力を削いでいく。


 そしてついにDDがファンブルを振った。
 だが、その結果は「制服警官が現れ、ランダムに攻撃を行う」というものだった。
 要するに敵が増えたのだ。しかも、それなりに面倒な。


 最終的に彼らは「夜叉」の仕業に仕立て上げることを諦め、標的を普通に殺すことになった。
「夜叉」として殺すことによる追加報酬は諦めることになるが、勝たなければ、生き残らなければ意味がない。


 まあ、実際、そうしなければ負けていただろうとは思う。


 数時間後。
 静まりかえった血戦の現場に、トヨトミピストルを握りしめた一人の老人が飛び込んできた。
 あたりには濃い血臭が漂い、動く者は老人以外、誰もいなかった。


「ヤシャ……」
 老人は絞り出すような声を出した。
 そして、おそるおそる死体の傷を確かめる。


「じゃ、ない……?」
 呆けたような声を出した老人は、やがて嗚咽を漏らし泣き始めた。


「……夜叉よう、聞こえるか。お前の後を継ぐモンが、現れたぞ……」
 悲しいとも嬉しいともつかないすすり泣きの声が、月のない大阪の闇夜に消えていった。





『闇の騎士、還る - Dark Knight Returns -』

*1:そうでもないか

*2:これ読み返すと意味わからんな。なんか縛り系のデータで、常備してるわけじゃないとかそういうのだっけ?

*3:今ならこういう切り返しにはならないなあ